◇咲秋学園(さくしゅうがくえん)

 
緑秋町にある私立学園。敷地が野球ドーム並みに広い。

 私立の強みか、公立よりも設備が整っており、食堂の他にカフェテラスがあったりもする。
他にも最新型のパソコンが設置されたパソコンルーム。音楽室が四つ。図書室が三つ。保健室にいたっては五つもあり、保険医が常駐している。
 これだけ至れり尽くせりで、授業料は公立並み。かといって他で徴収するような様子もなく、そのあまりの怪しさに警察が訪れたこともあったらしい。

 しかし、実際は特に何も見つかっていない。

 その後はさらに施設を拡大し、最近は、放課後のたかだか二時間程度おこなわれている部活にもお金を注ぎ始めた。


 
洵一曰く、どこかにお金の湧く泉があるのかもしれない。とのこと。

 入学するにはそれなりに頭が必要になるが、それでも授業料その他の金銭関連はサポートしてくれるため、毎年入学希望者は後を絶たない。

 合格発表をする際には、合格者の名前を点数順に発表するという独自な事もやっている。

 ちなみに、水越 円はドンケツ。つまり合格ギリギリだった。瀬那 社も似たようなモノ。

 制服はボタン無しの灰色と少し珍しいタイプ





◇橘(たちばな)

 橘 洵一の実家。現当主は兄の橘 顕吾。

 かなりの財を有しているらしく、遠野グループには敵わないが、遠野家単体ならば五分に渡り合えるほど。

 魔術界では無名に近いが、暴力の世界では鬼門的な扱いになっている。
 その理由が、昔から秘密裏に請け負っている暗殺業で、今の財や地位はこれによって築かれた。
 橘に標的にされた人物は徹底的に殲滅される。

 そしてそれを実行するのが、橘の裏を担った人物である。

 今回、シエルが緑秋町に訪れたのは、橘家が“魂の加工と流動”の魔術を確立させたという情報の真偽を確かめ、必要ならばその神秘を消却するためである。

 橘家は兄弟による世襲制で、一人目が表として当主の座を。二人目が裏として、橘家の地位向上の為に暗殺業をさせられる。





◇橘 顕吾
(たちばな けんご)

 橘家の現当主。忌み名は黄海(おうかい)。橘 洵一の兄。彼が当主の座に着いたのは一ヶ月前。

 顔色一つ変えないで命を奪える冷酷な性格で、この世の全てを見下した冷たい眼をしている。不気味な存在感を持っており、シエルは男を“館の闇に巣食う闇そのもの”と評した。

 顔、声、仕草ともに橘 洵一にそっくりだが、どちらかといえば橘 洵一が彼に似ているといったほうが正しい。

 格闘戦、魔術能力においてもシエルを下回る橘 顕吾が何故、彼女の攻撃を苦もなくかわせたのかは不明である。





◇橘 洵一(たちばな じゅんいち)

 この物語の主人公。
忌み名は司忌。

 一ヶ月前に咲秋学園に転校してきた。瀬那組の組員の一人。

 時折、ズレた発言をするためボケ担当と思われているが、本人は無自覚で、グループ内では守城 政彦と同じく、他の二人に振り回されている。

 実家から勘当されており、島流しみたいな形で、緑秋町の武家屋敷で山神 詩織という使用人と二人暮らしをしている。

 
橘家では裏として、地位向上の為に暗殺業をやらされており、被害者の数は百数十人。護衛などの周囲の被害も含めれば二倍に及ぶが、とある事件がキッカケで感情が芽生えてしまい、それが原因で、約一ヶ月前から橘家の持ち家である武家屋敷に追放されたというのが本当のところ。それから暗殺業は一切やっていない。

 山神 詩織が少し苦手というか、どう接していいか分からない。

 好きな料理は和食なのだが、味ではなく口当たりが好き。
 自分で調理したもの意外では、山神 詩織の料理しか口に出来ないという、変な体質の持ち主。

 日常を乱される事を嫌い。とりわけ非日常に属する人間には敏感に反応する。

 何かの病気なのか左眼が塞がっている。

 
時折、発作のようなものが起こるが、その時の音は、メトロノーム音、秒針音に酷似する。